- 作者: 山本眞功
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2005/12
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
目次で内容をみると...
序 章 家訓の歴史
第1章 商家の鑑 近江商人の家訓
第2章 時代を刻んだ豪商の家訓
第3章 いまも続く老舗の家訓
第4章 日本を動かした財閥の家訓
第5章 いまに活かしたい家訓集
家訓の内容はポイントの抜粋だが、その家訓を創った商人の生涯も紹介されているところが親切。古典的な家訓だけでなく、島津製作所・二代目島津源蔵の「事業の邪魔になる人」「家庭を滅ぼす人」の各15カ条なども面白い。これなど、採用にあたっての基準になるかもしれない。江戸時代に生きた三井財閥の基礎を築いた三井高利は遺訓のなかで「長崎に出て、外國と商売取り引きせよ」と言っている。鎖国の時代に海外を向いていた。このあたり、さすが。
江戸時代の商人、菊池長四郎の家訓は、こんな具合。
かつて富豪の衰えた理由をみると、天のなせる災いではない。水害や火事、凶荒(きょうこう)などに遭っても、三年から四、五年の間、財産が増えない程度のものであって、家が傾く原因とはならない。家が傾くのは多くの場合、主人であるものの常日頃の行いが正しくないことによっている。怠けて遊興にふけり、酒食に驕り、衣服に贅沢をし、欲望のままに行動し、遊芸を好み、放蕩無頼の友に交わり、豪華な家に暮らし、剣刀を買い求め、珍しい品を蒐集して人に誇るなど、これらのことは皆、道に背いた行いであり、君子の卑しむところである。
いま読むと、含蓄のある言葉。東日本大震災に負けることはない。負けるとしたら自らに負けること。国も組織も外敵によっては滅びない。滅びるときは自壊する。これも古くからの教えなのだな。
山陽道の塩田王といわれた野崎家の家訓...
身代は一種類の産業にだけ託してはならない。我が家の場合は、塩田・田地・公債の三種に分けるようにせよ。このように分けて置くならば、天災や凶荒などに遭っても、三種の中のいずれかを安穏に保つことができるだろう。
経済的に苦しくなったら、世間に隠し立てすることなく、速やかに対策をとれ。その方法としては、まず家屋を縮小すること。縮小の仕方は第一に表座敷、次に中座敷というように、必要性の低いものから徐々にたたんで売却せよ。それでも十分でなければ、家業に妨げのない限りの諸道具を売却せよ。人の目にも立ち、己の心も改めるようにするほどのことをすれば、どうして身代の立ち直らぬことがあろうか。けれども、なお見込みの立たない場合は、公債を処理して、最後に痩せていて収穫のあがらない下田、中程度に肥えている中田と、順を追って売却せよ。地味の肥えている最上の良田については、己が身命と思い手をつけてはならない。
災害の多い日本ならではの家訓。そして、これを書き残したのは、やさしい人だなあ。子孫はプライドもあって先祖が残してくれたものを売れないものだが、遠慮無く売れと言い残しておいてくれているのだから。
ともあれ、家訓や遺訓は人生やビジネスの知恵が詰まっていて、面白い。