オリンパス、企業買収を利用した“粉飾決算”を認める。FACTA完勝。大手メディア敗北の年だなあ

オリンパスの高山修一社長は8日の記者会見で、損失計上の先送りの責任者は、菊川剛前社長、森久志副社長、山田秀雄常勤監査役との認識を示した。また、上場廃止の可能性については、そうならないように全力で努めると語った。(略)オリンパスは8日午前、1990年代ごろから有価証券投資などに関わる損失計上を先送りし、過去の買収資金を損失先送りの解消のために利用していたことが判明したと発表した。

 不透明な巨額M&Aについて「適正です」と言ってきたオリンパスが、先送りしてきた(飛ばしてきた?)損失の解消のためにM&Aの支払い項目を利用していたと“粉飾決算”があったことをついに認める。加えて、責任は、菊川、森、山田の3役員にあると...。株価は当然、ストップ安。有価証券報告書の虚偽記載ということになってくるんだろうから、そうなると、上場廃止にもつながりかねない大事件になってくる。
 しかし、この事件を見ていると、つくづくと日本の大手メディアの劣化を感じる。そもそも、この事件の発端は「FACTA」8月号のこの記事。
オリンパス 「無謀M&A」巨額損失の怪FACTA online => http://bit.ly/pdixXx
 ここで問題点は指摘されていた。でも、どこも追わなかった。この記事に注目したのは、解任されたウッドワード前社長だけだったのかもしれない。で、メディアが騒ぎ出したのも、解任されたウッドワード氏の話をフィナンシャル・タイムズが書き、それを海外メディアが追っかけ、大騒ぎになってから、日本メディアが参戦するといった具合。突然の社長解任は、日本と欧米の経営文化の差というよりも、もっときな臭いものが裏側にあるんじゃないの、というのは、FACTAの記事を知っていれば、私みたいな素人でも感じたけど...。
★日本の企業はスキャンダルだらけ。九電、オリンパス大王製紙 - やぶしらず通信(10月14日) => http://bit.ly/pgq4UI
 でも、騒ぎが大きくなってからも、日本の新聞、テレビは発表報道で、調査報道らしい調査報道はあまり見られなかった。どうなっているのかなあ。で、今日の午前中、突然、オリンパスが認めたわけだどけど、高山社長の会見を見ると、昨日の夜になって、森副社長が損失先送り処理を告白したという。で、思い浮かぶのは、こちら。この記事がオリンパスにトドメを刺したのかなあ、と。
オリンパス買収仲介者は80年代から関係、「損失先送り」に関与=関係筋 | Reuters => http://bit.ly/vnaO2e
 ロイターの記事。ウェブでの配信時間を見ると、11月7日18時03分。昨日の夕方で、損失先送りを報じている。さらに8日発売(早いところは7日かな)の「週刊朝日」11月18日号も「スクープ オリンパス騒動/発端は経営陣総ぐるみの損失隠し疑惑」という記事を載せている*1FACTAFACTAで、12月号(11月20日発売)で、全貌を書くと宣言していたし、役員の人たちも株主代表訴訟はあるだろうし、怖くなったのだろうなあ。
 しかし、今回の事件、日本の新聞・テレビはメディアとしては最後の最後までダメダメだった。社長会見を中継していたのは「ニコ動」、ライブ・ブログはウォール・ストリート・ジャーナル(英語)だったし...。頼りになるのは、アウトサイダーの時代なんだなあ。
オリンパス高山修一社長 緊急記者会見 生中継 - ニコニコ生放送 => http://bit.ly/rrkcAR
★Live Blog: Olympus Admits to Hiding Losses - Japan Real Time - WSJ => http://on.wsj.com/sH4rgF
 大本営発表型で終わってしまった原発報道に続いて、オリンパス報道でも、新聞・テレビは弱かった。今年のスクープに賞が送られるとしたら、FACTAの記事だったのだろうなあ。新聞協会賞が調査報道型のスクープに送られるものならば、2011年は「該当作なし」にしたほうが潔かったのかも。
★新聞協会賞受賞|日本新聞協会 => http://bit.ly/sq2ndc
 今回のオリンパスの事件、1990年代からということは、バブル崩壊以来、20年余り経つのに、いまだに処理が終わっていなかったのだなあ。同じような企業が他にもあるのだろうか。日本企業は疑われてしまうんだろうなあ。

粉飾決算を見抜くコツ【改訂新版】

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*1:週刊朝日<デジタル>2011/11/08発売号【雑誌のFujisan.co.jp】 => http://bit.ly/sxTXPY