007/スカイフォール

 「シリーズ最高傑作」という謳い文句はだいたい当てにならないことが多いのだが、これは確かに面白かった。ダニエル・クレイグの007は3作目だが、アクションはすごいんだけど、クレイグも好きな俳優なんだけど、アクション過多というか、一本調子というか、これでもかこれでもかの過激アクションに食傷してしまうところがあった。アクションのためのアクション映画とでもいうか...。しかし、「スカイフォール」はアクションとドラマが調和して、深みのあるアクション映画であり、サスペンスであり、ドラマになっている。初代ボンドのショーン・コネリーのような優雅さというか、エレガントさとは別のハードボイルドで現代的で、複雑なボンドになっている。20世紀のボンドはコネリー、21世紀はダニエル・クレイグだなあ。
ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray] アメリカン・ビューティー [DVD] こうした作品に仕上がったのは第一に監督にサム・メンデスを持ってきたことだろうなあ。「アメリカン・ビューティー」のメンデスがボンド映画を作るとは思わなかった。でも、英国人監督だからこそ、スコットランドの原野がクライマックスの舞台として生きてくるのか、と思ったりもする。加えて、ボンドの敵役はハビエル・バルデム。この人、アカデミー助演男優賞をとった「ノーカントリー」といい、極めて個性的な悪役を造形する。このほかにも、レイフ・ファインズとか、アルバート・フィニーとか、いい役者で脇を固めている。このあたりも手を抜いていない。アクションもキレがあるし、ドラマとしても面白い。情報機関の敵は、国家や組織だけではなく、個人になる。そして情報システムが主戦場になる。スノーデン事件を先取りしているような...。
 アデルの主題歌もいいし、なるほど評判になるだけのことはある。で、次回作の監督は誰なのだろう。ドラマの得意な監督のほうが面白いのかも。