東京五輪買収疑惑でJOC会長が記者を謁見。ブラック・タイディングス、こんな会社なのに...

 どんな記者会見になるのかと思ったら、会見ではなく、謁見でした。

2020年東京五輪パラリンピック招致を巡る不正疑惑で、日本オリンピック委員会JOC)の竹田恒和会長(71)が15日、東京都内で記者会見し、改めて身の潔白を主張した。フランス司法当局が捜査中であることを理由に質疑は受け付けず、会見は7分で終わった。

改めて自身の潔白主張、五輪招致疑惑でJOC竹田会長(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 JOC、以前からシンガポールの会社、ブラック・タイディングスへの支払いをコンサルタント料と説明しているが、今回の疑惑が発覚したのは、ロシアのドーピング問題から。それもドイツ公共放送ARDの調査報道で、ドーピング疑惑のカネに絡んでブラック・タイディングスの怪しい実態が暴露されたことに端を発している。ドイツの取材班はシンガポール現地に突撃取材しているが、YouTubeに、このドキュメンタリーをアップしている人がいた(いずれ削除されるかな)

 https://www.youtube.com/watch?v=lpiUm26ffzo

 ここでは「ドーピングの秘密」になっているが、Jスポーツなどで放送されたときは「ドーピングにまつわる秘密文書」だった。約60分の番組が6つに分けてアップされているが、ブラック・タイディングスが登場するのは、この6-5の6分ぐらいから。怪しさ満載。絵に描いたようなペーパーカンパニーJOCがこの動画をYouTubeで見つけたら、削除依頼を出すかもなあ。まずいもんなあ。

 でも、YouTubeで削除しても、この調査報道をしたHajo Seppeltのサイトに、このドキュメンタリーのアーカイブがあるんだよねえ。日本語字幕がないから、難しいけど、こちらだと46分過ぎあたりから。もう隠せないよねえ。

 http://hajoseppelt.de/2014/12/doping-top-secret-how-russia-makes-its-winners/

 そもそもロシアの国家ぐるみのドーピングが発覚したのは、2014年12月に放映されたこのドイツ公共放送の調査報道番組がきっかけ*1。そして、疑惑のブラック・タイディングスを調べているうちに今回の東京五輪買収疑惑が浮上した。東京オリンピック2020の決定は、2013年9月だから、この調査報道が炸裂する1年以上前。ロシアのドーピング疑惑取材からから飛び火してくるとは考えてもいなかっただろうなあ。

 JOC、ブラック・タイディングスにカネを支払ったこと自体は否定せず、コンサルタント料と説明しているのだが、苦しいなあ。どのようなコンサルティングを誰からどのように受けたのか。興味あるところだけど、その資料は残っているのだろうか。電通の役割は? 記者だったら、聞きたいことはいっぱいあったと思うけど。

 JOCの会長が、これだけ不利な状況で記者会見するのはなかなかの度胸だと思ったが、声明文を読み上げて、記者を謁見するだけだったとは...。日本のメディアは忖度してくれても、この疑惑を数年前から追っている英ガーディアンをはじめ、仏ル・モンドの記者など外国人記者の質問は容赦ないだろうし、どうするんだろうと思ったら、質問を受ける気など最初からなかったんだなあ、きっと。

 外国人だけ締め出して記者会見するのかと思ったら、日本人も無視だったんだ。何だか疑惑を深めただけみたい。しかし、平成末期らしいといえば、平成末期っぽい記者謁見だったけど、最近はよく見る風景だなあ...。でも、日本では通用しても、今度は世界のメディアが相手だから...。

 しかし、改めてドイツ公共放送の調査報道はすごかったと感心する。NHKもドキュメンタリーは良いものをつくっているんだから、報道がやらないんだったら、ドキュメンタリーの取材班がドイツ公共放送並みの取材力を発揮して、つくらないのだろうか。無理かなあ。見たいなあ。もう、そんな気概もエネルギーもNHKには残っていないか。街角で72時間取材するだけかな。