ムバラク後のエジプトはイスラム色が濃厚に?。ムスリム同胞団はイスラエルとの平和条約破棄を主張

エジプト最大のイスラム原理主義勢力、ムスリム同胞団の最高幹部の一人でカイロ大学教授のラシャド・バイユーミ氏は2日までに、ムバラク大統領退陣後の政権で主導権を握ることに強い意欲を示し、エジプトが1979年にイスラエルと締結した平和条約を破棄するほか、米国の援助拒否、シャリア(イスラム法)導入など、政策の抜本的修正を目指す意向を表明した。バイユーミ氏は同胞団内で最高指導者に次ぐ幹部3人の1人。時事通信のインタビューに対し、同胞団の一致した見解として明らかにした。

 ムスリム同胞団は、親米ムバラク政権による弾圧の対象になっていたのだから、反米・イスラム化を主張するのは当然といえば当然とかもしれない。エジプト・イスラエル平和条約の破棄ということもあるのだろう。問題はこうした主張がエジプト市民の支持をどれだけ得ているかだが、米国が30年近く強権政権を支えてきたツケを支払うことになるのかもしれない。ムバラク=米国、反ムバラク=反米と。
 1950〜60年代、ナセル大統領時代のエジプトは、米ソ冷戦の中で非同盟主義を主唱し、アジア・アフリカなど第三世界のリーダーとしての存在感があった(非同盟と言いながら、西側と対立した結果、東側の支援を受け、西側先進国にとっては鬱陶しい存在だったが)。それが、この30年余りは米国を後ろ盾に国民を搾取するような政権になってしまった。米国(および先進国)にとっては便利だったわけだが、こうした構造は続かなかったのだな。
 対テロ対策でも、米国が逮捕した容疑者を、エジプトに送り込み、そこで秘密警察が拷問にかけて情報を聞き出そうとしているというウワサが流れたこともあった。米国は法律で拷問を禁じられているが、エジプトに送ってしまえば、という話だった。イスラエル問題、対テロ対策で米国はムバラクを利用し、ムバラクは権力の維持に米国を利用するという関係という見方は以前からあった。しかし、この共存共栄の構造からはエジプト国民が抜けてしまっていた。最初はムバラクの頭の中に、親米路線が国益にかなうという信念があったのかもしれないが、次第に国益の中から国民が消えていってしまったようにみえる。
原理主義の潮流―ムスリム同胞団 (イスラームを知る) イスラーム政治と国民国家―エジプト・ヨルダンにおけるムスリム同胞団の戦略