マックス・ギュンター「マネーの公理ーースイスの銀行家に学ぶ儲けのルール」

マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール

マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール

 「投資」ではなく、「投機」に関する本。スイスと言えば、「チューリヒの小鬼」とか、投資家というか、投機家として有名だが、為替市場に限定するわけではなく、スイスの銀行家が「投機」にあたっての暗黙知になっている「公理」を紹介する。マネー本といえば、普通は「投資」を進め、しかも「分散投資」「長期投資」を公理とするものだが、この本はそれではいつまでたっても、大きなリターンはない、という。むしろ、投機が富を築くといい、それがスイスの銀行家の流儀という。現代は「投機の時代」といっていいぐらい市場の変動が激しいだけに、このスイスで生まれたといわれる「マネーの公理」はいまも輝きを持っているかもしれない。
 で、その12の公理は、こんな具合。

マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール 1.リスクについて
  心配性は病気ではなく健康の証である。もし心配なことがないようなら、十分なリスクをとっていないということだ。
 2.強欲について
  常に早すぎるほど利食え
 3.希望について
  船が沈み始めたら祈るな、飛び込め
 4.予測について
  人間の行動は予測できない。誰であれ、未来がわかると言う人を、たとえわずかでも信じてはいけない
 5.パターンについて
  カオスは、それが整然と見え始めない限り危険ではない
 6.機動力について
  根を下ろしてはいけない。それは動きを遅らせる
 7.直観について
  直観は説明できるのであれば信頼できる
 8.宗教とオカルトについて
  宇宙に関する神の計画には、あなたを金持ちにすることは含まれていないようだ
 9.楽観について
  楽観は最高を期待することを意味し、自信は最悪に対処する術を知っていることを意味する。楽観のみで行動してはならない。
10.コンセンサスについて
  大多数の意見は無視しろ、それはおそらく間違っている。
11.執着について
  もし最初にうまくいかなければ、忘れろ
12.計画について
  長期計画は招来を管理できるという危険な確信を引き起こす。決して重きを置かないことが重要だ。

 なるほどなあ。で、読んでいるうちに、以前、読んだ本と通底するものがあることに気がついた。「リスクに挑むーー市場で生き残る攻撃的財務論」にある、マーケットで勝ち残るための条件。それはこんな具合

リスクに挑む―市場経済で生き残る攻撃的財務論 1.相場はトレンド、テクニカル、スーパーハイウエイがある
 2.相場のトレンドにさからわないーー利益は大きく損失は小さく
 3.動く前に「予想利益」と「予想損失」を厳密に比較する
 4.資金運用には人間の神経が耐えられる限界がある
 5.予想困難な材料や自分に自信がないときは参戦しない
 6.相場は相場に聞けーー自分の相場観にこだわらない
 7.相場の大局観を持つためにチャートを使う
 8.「追い証」は、自分の相場観に対する黄信号
 9.素直なポジションを持つーー二つの方向に賭けない
10.細かく利食いするーー強気に走ると時機を失する
11.商品、為替、金利・債券、株式など総合的に相場を見る

 自分の相場理論にこだわらず、市場の流れについて、細かく利食う。目標利益を決めて、深追いしない、反対に予想損失を決めておいて、早めに損切りし、次の勝負に出る。このあたり、両書に共通している。当たり前といえるのかもしれないけど、その当たり前のことをどんな状況でも出来るかどうかが運命の分かれ目なんだろうな。加えて流動性の重視も両書に共通している。損切りしたいときに売ることも出来ないことは事態を悪化させる。ときとしては破滅をもたらす。今のサブプライムローン問題なども流動性が大きな問題としてある。マーケットで生きてきた人が得る教訓は共通しているんだなあ。