桑名淳二「アメリカ雑誌は表紙で勝負する」

アメリカ雑誌は表紙で勝負する

アメリカ雑誌は表紙で勝負する

 米国雑誌の表紙の歴史と分析。2004年の出版なので、ちょっと古いが、データも豊富。「Esquire」「Fortune」「Rolling Stone」「Vogue」「National Geographic」「TIME」「Newsweek」「Harper's Bazzar」「New Yorker」「LIFE」など米国の伝説的有力誌の表紙の図版もあって、楽しめる。やっぱり雑誌は表紙だなあ。「New Yorker」は、90年代にティナ・ブラウンが編集長となって新風を吹き込み、新たな黄金期を迎えるのだが、そのとき表紙づくりのために美術担当編集者として招聘されたのがフランソワーズ・モーリーで、「マウス」のアート・スピーゲルマンの夫人だったというエピソードなど、へえ、と思う。スピーゲルマン自身、「New Yorker」の表紙を描いていたこともあるというのは、ちょっとびっくりだった。また、「TIME」の名物企画となっている「Man(People) of the Year」が、1928年の新年号の表紙に良いものがない一方、そのときのニュースの顔を表紙にするのが売り物の雑誌なのに、27年5月に大西洋無着陸横断飛行を実現したチャールズ・リンドバークを取り上げないままで来たため、リンドバーグを表紙にする便法として「Man of the Year」という特集を思いついたという話題も、トリビアだなあ。もっとも、この特集は毎年続けることで定着したわけだけど。