金賢姫テレビニュースショー

 今日のニュースは「金賢姫テレビショー」といったほうがいい。テレビは競い合うように金賢姫の「単独インタビュー」やら料理シーンやらを放映している。韓流スターのクイーンのような扱いだが、肩書きは元死刑囚。大韓航空機爆破事件で115人の乗客・乗務員を殺したテロリストである。国賓待遇じゃないかと思える遊覧飛行といい、軽井沢の豪華別荘滞在といい、これは異常な感じがする。拉致家族が自分たちの家族の情報を持っている可能性がある人間の話を直接、聞きたいと願うのは当然の話で、機会が設定できるのならば、すべきだが、それをテレビショーにするのは別の話だと思う。いくら20年以上前の事件とはいっても、テロリストに対して国としてどう考えているのか、わからない。北朝鮮の異常さを宣伝したいという目的があったのかもしれないが、むしろ政府、メディアともに日本の異様さが際立つことになってしまった。
 大体、北朝鮮から韓国に逮捕、保護されている人間が話すことがすべて本当かどうかなど、わからないと思うのだが…。既に昔の話でもあるし、普通の人間でも厳しい環境にある人に話すときは、相手をおもんばかり、善意の嘘をつくことだってあるわけだから。ともあれ、何のための来日か、さっぱりわからない。テレビ、新聞を見ても、わからない。メディアが今回の来日をどう見ているのかも、わからない。批判的な声もあると報じるのは、いかにも、私たちもちょっとおかしいと思っています的なアリバイ作りで、本当の答えにはなっていない。このところ、インターネットの隆盛で、広告環境が厳しく、テレビ・ジャーナリズムは難しい状況にあると聞くが、それにしても、こんなニュースの伝え方は信用を失う自殺行為だと思う。
 国でも組織でも壊れるときは、外敵によるものではなく、内部から崩壊していくというが、メディアにとって敵はインターネットではなく、自らの劣化のほうにあるのではないかと思えてしまう。夕方のニュースなど既に報道とバラエティの垣根は崩れている。ニュースのバラエティ化がNHKまで巻き込んで全体に広がっていくのだろう。それとも、これは、きちんとしたニュース番組が見たければ、CSなり何なりオカネを払って有料放送を見なさいというテレビ局の高等戦術なのだろうか。