『フラット化した世界』のトーマス・フリードマンはエジプト・タハリール広場に乗り込んでいた

 ジャーナリストは現場で取材してこそジャーナリスト。その意味で、『フラット化した世界』『グリーン革命』のトーマス・フリードマンはやはりジャーナリストだなあ。タハリール広場に自ら乗り込み、自分の目で確かめ、その場で若者と話し、レポートを送っていた。以下のストーリーはエジプトの人々の心情を描いて感動的だ。
Out of Touch, Out of Time - NYTimes.com => http://t.co/yXwBsrZ
 いくつものベストセラーを出し、もうジャーナリストとして大御所といってもいい存在なのに、動乱の地に自ら飛び込んでいっていたのだ。上の記事のほかにも、2月に入ってから、こんなにニューヨーク・タイムズに記事を送っている。
B.E., Before Egypt. A.E., After Egypt. => http://t.co/gRxdlMd
China, Twitter and 20-Year-Olds vs. the Pyramids => http://t.co/33FTBS8
Speakers’ Corner on the Nile => http://t.co/lqt5HhC
Up With Egypt => http://t.co/OxN2JUP
 ノンフィクション作家ではなく、本当に今と生きるジャーナリストだったのだな。考えて見れば、フリードマンは中東特派員で、出世作は『ベイルートからエルサレムへ』だった。

ベイルートからエルサレムへ―NYタイムズ記者の中東報告

ベイルートからエルサレムへ―NYタイムズ記者の中東報告

 それだけに今回のエジプトの事件には現場に行かずにはいられなかったのだろうな。すごい行動力。今回の事件が歴史的な事件、それは中東だけではなくて、世界史的な事件として見ているのだろう。英エコノミストもそうだったが、明確なリーダーもなく、大規模な反政府デモの秩序が保たれている。その背景にフェイスブックツイッターなどのインターネット革命があるのかどうか。21世紀に入ってからの初めての21世紀的事件とみているのだろう。20世紀の血塗られた革命とは違った21世紀の新しい非暴力革命が実現するかもしれないという理想主義的な思いもあるのかもしれない。
村上春樹 雑文集 一方で、日本のジャーナリストはどうなのだろう。まだ日本人ジャーナリストからの知的刺激に満ちた問いかけは出てきていない。いまだに20世紀的な構造の地政学的解説にとどまっている感じがする。それ以前に日本人ジャーナリストの関心も薄いような気もする。戦場カメラマンの渡部陽一さんは血が騒がないのだろうか。「自由報道協会」の議論も大切かもしれないが、既に死んでしまったような記者クラブ制度を相手にしているよりもカイロに乗り込まないのだろうか。
 個人的には今回の事件をどう見るのか、いちばん話を聞いてみたいのは村上春樹氏だなあ。高くて固い壁を卵たちが集まって崩すことができるのかどうか*1村上春樹に誰かインタビューしないのだろうか。読みたいなあ。
【追記】
 ムバラク大統領の退任が発表され、フリードマンもカイロから記事を送っていた。
Postcard From a Free Egypt => http://t.co/Tnl12F4
レクサスとオリーブの木―グローバリゼーションの正体〈上〉 フラット化する世界 [増補改訂版] (上) グリーン革命〔増補改訂版〕(上)

*1:村上春樹エルサレム賞スピーチ「卵と壁」全文(日本語訳): 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース) => http://t.co/WstzSea