三國陽夫「黒字亡国ーー対米黒字が日本経済を殺す」

黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す (文春新書)

黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す (文春新書)

 このところ、マーケットが荒れているので、経済関係の本で通貨や経済のお勉強。で、この本は帯に曰くーー「輸出立国」の実態は「輸出亡国」。日本(円)はアメリカ(ドル)に富を収奪される通貨植民地であるーー。読んでみると、説得力がある。輸出で稼いだカネをドルで米国に置いている国、日本。決済のないクレジットカードで買う米国と売る日本。何だか変。日本って米国の植民地経済なんだろうか。前川レポート以来、内需型への転換を叫ばれながら、先送りを続けてきた国、日本。でも、さすがに経済構造を変えることを真剣に考えないと、この泥沼から抜け出すことは出来ないのだろう。ともあれ、米国の低金利を支えてきたのは日本。バブリーな消費をつくってあげたのも日本。その見返りがデフレではねえ。奴隷経済だなあ、これじゃ。ユーロを持つ欧州勢、とりわけドイツと、どこで道を違えてしまったのか。「輸出立国」という概念はもう日本人のDNAになってしまっているんだけど、それが本当に正しいのか。円高って悪なのか、真剣に考えてみるべきなんだろうなあ。で、こんな一節があった。

日本は再び経済成長できる政策への転換を真剣に検討することが急務である。そのためには内需拡大に焦点を当てるしかない。それは容易なことではないが、日本の黒字が支えているアメリカの住宅バブルが崩壊して世界経済の機関車役をアメリカが果たせなくなった時、日本は世界の世論の支持を受けて内需拡大による経済成長を求めることが可能となる。

 この本の初版は2005年12月。2年余り前に米国の住宅バブルの崩壊を予言していたわけかあ。そして、内需拡大は、まさに今現在の課題なんだなあ。そうした声は聞こえてこないけど・・・。