奥山俊宏、村山治、横山蔵利「ルポ 内部告発」

ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか (朝日新書)

ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか (朝日新書)

 自動車、食品、建設、病院から自治体、警察、検察に至るまで内部告発・内部通報の現実を朝日新聞記者がルポした本。組織への拮抗力として内部告発が有効であることがわかる。内部告発に至るまでと、その後の告発者たちの苦悩も描かれている。一方で、内部告発の草分けと言われる運輸会社の人の話を読むと、その勇気と信念に感心すると同時に、ある種の違和感も持つ。会社の圧力も相当なものがあったこともあるのだろうが、そこまで頑なに生きるのか、と思うところもある。社内に共感する者を持つことも拒絶するようなところがある。会社がそうした人にしてしまったともいえるのだが、新聞は理解できるとして、政治家まで使い始めると、ちょっと。会社は暴力団も使ったようだから、それも無理のない話なのかもしれないが。ただ、そうした違和感も呑み込んで、内部通報制度を持つことが企業や組織にとっても自浄力を高める必要性は理解できる。