NHK BSプレミアム「女優 夏目雅子 笑顔に秘められた執念」

テレビCMで鮮烈なデビューを飾った夏目雅子は、みるみる本格派女優としてスターの座を駆け上がり、27歳にして突然の病でこの世を去った。主役を演じた映画はわずか4本。しかし現場をともにした映画人は皆、「雅子伝説」を抱えている。「鬼龍院花子の生涯」の有名なセリフ「なめたらいかんぜよ」は、どのように生まれたのか。飾らない人柄といちずな仕事ぶり、時には鬼気迫る執念を見せた雅子の素顔をさまざまな証言から描く。

ザ・商社-全集- [DVD] NHKBSプレミアムが「邦画を彩った女優たち」のシリーズとして4月18日に放映していた一編。五社英雄監督の「鬼龍院花子の生涯」、相米慎二監督の「魚影の群れ」、篠田正浩監督の「瀬戸内少年野球団」に焦点をあて、当時の関係者の証言で綴る。あまりにも美しく、あまりにも華やかで、あまりにもはかなく哀しい人だった、と改めて思う。番組で再三登場する「ひまわり」よりも、ラストに出てくる夏の夜に大きな輪を広げる「花火」のイメージのほうが合っている人のように思える。
 「邦画を彩った女優」というところに焦点を絞ったためか、和田勉演出のテレビドラマ「ザ・商社」について全く触れられていないのは残念だったが、それでも、印象に残るドキュメンタリーだった。それにしても、亡くなってから既に四半世紀か。番組では、死を看取った夫の伊集院静氏にも取材を申し込んだが、これはかなわなかった。伊集院氏は取材を断る手紙で、話をするには、まだ整理が付いていないからだという。もう四半世紀ではなくて、まだ四半世紀なのかもしれない。
 この番組を見て、「魚影の群れ」を見たくなってしまった。
【やぶしらず通信・関連ログ】
伊集院静『なぎさホテル』(電子書籍) => http://bit.ly/ffcAeg
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