オリンパス問題、博打の損を取り返すために博打をしていた?金融機関は幸福だった?

オリンパス損失隠し問題、新聞を読んでいても、何だか、よくわからない。バブル崩壊後、90年代に残っていた損失が500億円だか1000億円だかあって、先送りしているうちにその損失がさらに膨らんだとか何だとかいう話なのだが、どうなんだろう。オリンパスのサイトには2000年3月期以来の有価証券報告書があって、それをみると(粉飾されていたものかもしれないけど)、2001年3月期以降、今度の不透明なM&Aまで何もしていなかったわけでもなさそうで、かなりの有価証券評価・売却損を出している。
オリンパス 投資家情報: 有価証券報告書 => http://bit.ly/t2GeaV
 新聞・テレビによく出てくるように、2000年3月期に金融資産整理損として約170億円を計上しているんだが、これ以降も、営業外やら特別損やらで多額の有価証券評価・売却損を出しているし、出資金投資損失・評価損、スワップ清算損、関係会社の評価・売却損、持分投資損失などなど、このあたりの項目に絡めて財テクの損失を処分したかもしれないような損失項目が山のようにある。エクセルで、ざくっと計算すると、2001年3月期から2011年3月期までの11年間に投資有価証券評価損・売却損だけで485億円もある。このほかにも大どころでは、営業外の持分投資損失が110億円、特別損の減損損失が72億円、スワップ清算損54億円とか、もう損失の百貨店状態。これに話題の「のれん償却損」が2009年3月期と2010年3月期で合計785億円...*1。先送りした損失を処分するためという話になっているが、それならば、どんだけ損をしていたんだろうと思える数字。財テクの損を時間をかけて消していきましょう、というのとは、ちょっと違う感じがする。
 むしろ、説得力があるのは、最近話題の「闇株新聞」のこんなくだり。

これは多分1990年代の後半から、いわゆる「損失先送り」ではなく「損失を一度に取り返せるかもしれないけれど、大体の場合はその何倍もの損失が新たに発生する」危険な投資を行い(その通りに)損失が急拡大したのと、「損失先送り」のために設立した内外のファンドで「無理な運用」をして含み損を解消しようとして逆に損失が急拡大したのと、最後にだんだん「損失先送り」取引が大型化・複雑化して行ったため取引コスト(還流する分ではなく、本当にアレンジャーに支払う報酬。昨日書いた「資金の流れを請け負う怪しげな輩にむしられた分」も含みます)の急拡大が、積み重なって行ったのでしょう。

 この解説は説得力があるなあ。粉飾されているかもしれない有価証券報告書を見ただけでも、火傷の跡がいっぱいある。博打に負けたオジサンが損を取り返すために博打にのめり込んでいったという構図のほうが説得力がある。単に飛ばしていたら、ここまで損が出るものだろうか。で、闇株新聞では、この裏側で、証券会社や投資アドバイザーが懐を肥やしていたというのだが、これもまた説得力がある。
 オリンパス有価証券報告書を眺めていて、面白いのは借入金の推移。1999年3月期末には短期借入金891億円、長期借入金160億円、社債1236億円(総資産5335億円)だった会社(連結)が、2011年3月期末は、短期借入金1272億円、長期借入金4111億円、社債1103億円(総資産1兆645億円)になっている。銀行借入よりも社債が多かった会社だったのに、いまは銀行借入への依存度が急上昇している。マーケットの時代といわれる中で、直接金融から間接金融へと大逆走している。不思議な会社だなあ。損失を先送りするなかで、金融機関を儲けさせる会社になっていた...。
 80年代バブルで、企業は財テクに狂ったけど、裏側では、金余りの中で金融機関、証券会社が煽っていた部分が大きかった。何だか、その図式と変わらないような臭いがするなあ。財務に詳しいメーカーの役員が暴走したと言うよりも、財務に詳しいと思っているプライドの高い人から、アタマのいい金融の人たちが寄ってたかって、むしりとったという風にも見えてくる。
 真相はどうだったのだろう。注目は、11月20日発売の「FACTA」12月号だろうか。
エミールより、探偵たちへ:阿部重夫発行人ブログ:FACTA online => http://bit.ly/vt6yss
 この会社の経営はどうかと思うけど、製品は好きなんだけどなあ。

*1:数字は、再チェックしてませんから、有価証券報告書からエクセルに入力する際に多少、間違っているところはあるかもしれません。億円未満切り捨てです。