カンヌ映画祭開幕。日本からは、三池監督「一命」と河瀬監督「朱花の月」

第64回カンヌ国際映画祭が11日夜(日本時間12日未明)、開幕した。開幕作品はウディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」。最高賞のパルムドールなどを競うコンペティション部門には、三池崇史監督の3D時代劇「一命(いちめい)」と河瀬直美監督の「朱花(はねづ)の月」の日本映画2本を含む20作品が出品されている。受賞結果は最終日の22日夜(日本時間23日未明)に発表される。

 カンヌ映画祭が開幕。今年は、コンペ部門に日本映画2作品。1本が河瀬直美監督の「朱花の月」で、もう1本が三池崇史監督の「一命」。「一命」は市川海老蔵瑛太共演の話題作だが、これは仲代達矢主演、小林正人監督の名作「切腹」のリメイクらしい(正確には「切腹」の原作となっている滝口康彦の「異聞浪人記」=新潮文庫「素浪人横丁」収録=の映画化だというけど、まあリメイクみたいな...)。これはちょっとびっくり。あのモノクロの重厚な作品を3Dで作っているから、さらにびっくり。どんな仕上がりなのだろう。「切腹」では、戦国の乱世が終わり平和な時代になり、リストラされた浪人と、権威主義的で人を人とも思わぬエリート意識丸出しの大藩の家臣たち(井伊家=近江彦根藩家中)との対立が描かれるが、この対決の構図は、いろいろと読み替えることができる。市民対官僚、フリーター対大企業エリート、卵と壁、そして階級差別、民族差別、学歴差別−−そうしたところが単なる武士道残酷物語にとどまらず、観客の心を揺さぶるのだろうし、現代にも通じたドラマとなる。「一命」も同じようなドラマ構造を持っているのだろうか。
切腹 [Blu-ray] 俳優陣で言えば、仲代の役が海老蔵だとすると、若すぎるが、設定を変えているのだろうか。それに海老蔵は見かけは野性的でも、本質的に体制側エリートの臭いがするが(これは例の事件の印象かもしれないが...)。このあたりは見てのお楽しみかもしれない。ともあれ、「切腹」を見てしまっていると、この映画を越えるのはハードルが高そう。「切腹」自体、1963年にカンヌ国際映画祭に出品され、審査員特別賞をとっている。僕は公開当時、リアルタイムで見ているわけではなくて、それから、ずいぶんたってから見たわのだが、それでも衝撃的だった。それまでの勧善懲悪の時代劇とは超えたところにあり、黒澤映画の痛快な時代劇とも違う。重い映画だった。殺陣も迫力があった。「切腹」とは「原作」を共有する点で同根だが、咲く花も、枝ぶりも違うものになっているのだろうか。原則の方は読んでいないから、その点はちょっとわからない。
 しかし、3Dなのかあ。切腹を3Dで描いたら、単なるグロになってしまうが、あの切腹の場面はあるのだろうか。モノクロで際立った、あの痛切な悲しみと怒りがカラー、しかも3Dだと、どうなってしまうのだろう。やはり、見てのお楽しみだろうか。
カンヌ映画祭・公式サイト(日本語) => http://www.festival-cannes.fr/jp.html
「一命」公式サイト => http://www.ichimei.jp/